2015年も間もなく去ってゆきますが、自分の写真にとって今年のスタートは二年ぶりのソウル・九龍村からでした。村のあちこちが焼けて(火災)周囲は焦げ臭くも、あの冷やりとくねくねした細い路地は何度歩いても刺激的でした。その後、上海、澳門、東京、大阪、香港、ベルリン、パリで写しました。
ゆく先々の都市で違った質感の刺激を沢山受けますが、旅に出て帰ってくると云う過程においては、基本的にどこを歩き写しても根っこは同じなのかもしれない、と徐々に実感しはじめています。
そこへせっかく行ったからには、できる限りその町の空気を肌で感じたく、ひたすら歩き回る自分自身は、どこまでも部外者で無責任に反応できます。だから意識して写し方を限定しないように、アレコレ考えないようなふりをして(これがとても難しく面白い)風景に溶け込む感覚を大切に思ってます。
そして戻ってきて暗室作業中や生活をしていく毎日で、後回しにした「アレコレ」について考えたり感じたりして思いを巡らせています。これまで歩いた路上、通過した無数の場所、以前過ごした都市、今暮らす地元、これから移住する町、が不思議とこれまでとは違って見えてきたりもします。
いつまでこうして好きな所へぷらっと行って、写真をして生活して行けるか分からないけど、まだまだ知らない場所に行ってみたい、見たことのないものを見てみたい、そこで一体何に反応して写すのか。いつまで役立たずの写真を撮っていられるか。 その時、自然と自分のなかに流れていったタイミングを大事にしたいといつも思っています。
いくつかの展示と数冊の本で発表できた仕事はとてもありがたく、これからの励みになりました。来年も一人でどっか行って、ほっつき歩いていられたら嬉しいです。
2016年がみなさんにとって良い年になりますように。 ありがとうございました。
2015.12.31 森川健人