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Thursday, December 31, 2020

『2020』


大阪・西成の旅もすっかり暮らしになってきた五年目。

年明け一月中旬から台湾・基隆と香港をまわって中国の広東省へ列車で到着したころから、新型コロナにたいし、自分の思考と感情が定まらないまま、あっという間に月日が流れ去っていました。あのころ直前で行くことが出来なかったインド・コルカタ、もはや外国を気楽に旅することは出来ません。 だめな時はじっとして、読書と頭の中で世界旅行。これもまた数年後には変化しているはず。

春にはニ年ぶり十一冊目の新作『MOSQUITO PAPER』。

大阪・西成の日常で撮っているものがどんどん溜まっていくなか、大切な区切りもあり早くまとめたいと、 本が出来上がりました。このタイミングで普段「見た」気になっている空間と、「感じた」つもりになっている 写真を紡いでみた結果、今までのようにもっといろんな世界を見てみたいと思うよりも、 当たり前だと思い込んでる日常のなかに、幼いころから感じてきたような、感情や匂い、知っている姿形や違和感、みたいなものが潜んでいて、そんな光景にも焦点を合わせる必要性を感じました。

いつまでこの生活が続くかわからない、いつまでこの仕事が出来るのか、いつまで今のところに住めるのか、 どう否定しようとしても、頭のどこかでそんな意識が浮かんで過ごした一年間だったように感じます。 これからどうなるかなんてわからないけど、これまでだってわからなかった、そう考えると少し気持ちが楽になってきます。あまり先のことを考えず一年一年、休み休み、怠け怠け、どうにか来年も乗りきれたらいいです。

その日、その時、大切にすること「ひとつ」自分の中に持っていれば他の小さなことはどう変わっても、ひとまず大丈夫、 そのくらい思いたいです。そのくらいの方が楽だし、人の意見もすっと受け入れられる気がするので、その日、その時、 そういうこと。

今年もいろいろお世話になりました。来年もどうぞよろしくお願いします。

2020年12月31日 大阪の自室にて

森川健人