植木屋、ポスター貼り、タブロイド紙の配送などなど、その時々掛け持ちのアルバイトをして写真をしていた東京時分……
中でもお気に入りは学生時代から続けたポスター貼り。それは路上写真撮影には絶好の仕事でした。ある日、渋谷の道玄坂でふと開始したポスター貼りは週2、3日ながら、その後10年近く続きました。
会社から受け取ったその日に貼る分の演劇や映画、イベント、ライブ等のポスターをカーキ色の縦長アーミーバックにつっ込み、カメラとフィルムは別のリュックに背負いスタート。都内を電車に乗り継ぎ、昼下がりから終電まで受け持ち地区を歩き回ります。
同じエリアをしょっちゅう回っていたので、いわゆる定点観察的な面白さを知ったのもこの頃で、あと新規開拓(ポスター貼りの)と謳いつつ、これまで歩いたことのない無数の路地を抜けると、長い間放置されていたであろう車や自転車、唐突に出くわす雑草地帯、稀に道端に寝ころぶホームレスに出会った時なんて、正直 「貼る」 ことはするっと頭から抜け 「撮る」 ことで心がスカッと軽くなり、どんどん気分が高揚していた記憶があります。
とは云え、手応えある写真感覚はまだまだつかめないまま、時間が過ぎていったように感じる時期でもありました。
久方ぶりにレコ村界隈を歩いていると……当時がまた足元から立ち現われてくるのを感じました。